「BPR研修で行革を「自分ごと」に。袋井市が進めるデジタル化推進の人づくり」

袋井市役所では、2021年11月にガバメイツとともに全庁業務量調査を実施。さらに2022年5月からは、全庁業務量調査のデータを活用して、職員を対象としたBPRワークショップを通した、デジタル人材育成を進めています。今回は、袋井市における業務改善の課題や、今までの取り組み、そして全庁業務量調査とBPRに取り組んだ経緯について、ICT政策課長小柳津和彦様とICT政策課情報システム係主任山本紘之様と総務課行政係主幹近藤友紀子様からお話を伺いました。
袋井市について
袋井市は静岡県の県西部に位置する人口8万8000人の都市。「日本一健康文化都市」を政策の柱に据え、WHOから世界都市会議で表彰を受けるなど、ウェルネスシティ、心と体、都市と自然、地域と社会の一体的な町づくりを目指しています。
のDX、内部情報系のデジタル化、町内のネットワーク関係、セキュリティ対策を全般的に進めています。



一番魅力に感じた点は、可視化されたデータに基づき論拠を立てて説明できるようになることです。デジタル化のために様々なツールを導入したことで、どのような効果があったのか、そういった実態が掴めておらずモヤっとしていました。このままではいけないとはわかっているものの、どこから手をつければいいのかわからないといった状態になっていました。
全庁業務量調査によって可視化されたデータがあれば、それぞれの感覚ではなく具体的な作業手順や業務量などを、全員が同じデータを元にして根拠のある議論ができるようになるという期待をしていました。ほかにも、業務にかかる作業時間をデータとして他の市と比較できたりもします。そのうえで、そもそもなぜこれくらい作業に時間がかかっているのか、という本質的な議論をすることができます。
改革を進めるためには、全員が改革の必要性を自分ごととして受け止める必要があります。詰め込み型で知識や方法を伝えるだけなく、可視化されたデータを自らの目で見て、理解し、分析することで、自分ごととして受け止めやすくなるのではと思っていました。

デジタル化を推進するためには、全庁・全職員にBPRの考え方を学んでもらいたいと思っていたのですが、年長者はデジタルという言葉に気遅れする様子も見えたことから、まずは若手から段階的に取り組むこととしました。しかし年長者や管理職の意識が変わらないと、組織全体で変わらないということも見えてきました。いくら若手が意欲的に取り組んでも、上の意識が変わらないと、組織全体でデジタル化は進まないという課題が見えてきたわけです。このままでは時代に取り残されてしまう。そのため、今回は各課1名の係長~課長補佐の管理職を対象としました。
また、ワークショップの対象者である係長から課長補佐級30名にとったアンケート結果から、「あなたの部署は業務改善が必要ですか?」という問いに対し約8割が「思う」「まあまあ思う」と回答しています。また「業務改善の障壁となる課題は何ですか」という質問に対しては、「人材がいない」「より優先する業務がある」が6割を超えています。要は、「業務改善の必要性は感じていても、人材不足や余力がない」という現場の状況も見えてきました。
BPRワークショップでの経験や学びを通して、デジタルや行革に明るい職員が増えることで、各現場が自ら課題を掘り起こし、そして実際に何をやったらいいのか、どのように進めたらいいのかを組み立てていくことが出来るようになることを期待しています。

デジタル化全体の取り組みでいうと、今は若手のボトムアップとともに、役職者の固定概念の変容やデジタルに対する知識のレベルアップ、あるいはBPRに対する理解を深めていく段階だと考えています。所属長が改革の旗振り役となり、係長や課長補佐級の職員が係員とディスカッションしながら、デジタル化のアクションを進めていく。さらに必要に応じてツールを入れて現場力を上げる。現場で課題に向き合う「人」を中心として進める仕掛けこそが一番の近道なのではないかと考えています。
また、こうした袋井市の取り組みが、全国の自治体の皆さんに活用してもらえるようなモデルになれたらと思っています。ガバメイツさんと一緒に、世の中の課題解決に寄与できればいいですね。