宇和島市システム標準化と併走したBPRの取り組み(Govmates Pitの活用事例)
宇和島市は四国の西南部に位置する人口約7万人(2023年3月時点)の伊達十万石の城下町です。また、市内中心部には現存12天守の1つ「宇和島城(重要文化財)」がそびえ立ち、自然地形と風土を活かした全国有数の生産量を誇る柑橘農業と水産養殖業が盛んな街です。
全国各地と同様、宇和島市においても人口減少や高齢化の急速な進展を背景とした、市民サービスの向上や地域の活性化、行政運営の効率化などの喫緊の課題に対応するため、客観的なデータに基づく業務の見直し手法を模索されていたそうです。
そこで宇和島市では、業務量の可視化・他自治体との比較分析を行うこととし、2020年度にガバメイツの支援を受け全庁業務量調査を実施。
これにより可視化されたデータを元に、職員にしかできない業務や、デジタルの活用による業務効率化が可能な領域など、改善につながる課題の抽出と業務実態の可視化に成功。またGovmates Pit(ガバメイツ・ピット)*1を利用し、BPRの検討や業務の引継ぎなど、可視化された業務データの活用領域を広げています。
また、2021年度からはデジタル庁が実施するガバメントクラウドの先行事業にも取組むとともに、国が示した自治体システム標準仕様書に基づき、2025年度末を期限とするシステム標準化に向けて、現状業務との比較(Fit & Gap)分析を進めているところです。
今回は、システム標準化とこれに伴う業務プロセスの見直しに関する取り組み。そしてGovmates Pitの活用などについて、デジタル推進課デジタル推進係主任小島佑貴様からお話を伺いました。
*1 弊社が提供する自治体DX支援プラットフォーム。他の自治体との間で業務量や手順の比較ができる。
(参考)宇和島市DX推進計画について
同市では、少子高齢化に伴う人口減少などの喫緊の課題に対応するため、DXを「デジタル技術の有効な活用を図り、新たな価値を生み出すことで未来を切り拓くこと」と定義し、2022年2月に「宇和島市DX 推進計画」を策定。本計画の中で「行政デジタル化の推進」を重点取組項目に掲げ、地方公共団体の情報システムの標準化・共通化や地方公共団体の行政手続きのオンライン化などの施策を着実かつ積極的に推進されています。
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宇和島市HPより抜粋
また、情報統計係は内部情報システムの運用管理やセキュリティ対策のほか、光ファイバ網などの地域情報通信基盤の整備や各種統計調査を主に担当しています。
今回のシステム標準化の流れは、これまで慣例的に行われてきた業務プロセスを抜本的に見直すことができる最大のチャンスと捉えています。
単なるシステムの置き換えに合わせた業務の見直しとするのではなく、Govmates Pitで作成した業務手順書を活用することで、BPR *2の推進とデジタル技術の有効活用を見据えた取り組みにしたいと考えています。
*2 BPR(Business Process Re-engineering)職務のフローやシステムなどを抜本的にデザインしなおすこと
このような経緯から、ガバメイツと協議を重ねた結果、Govmates Pitで業務手順書を管理するだけでなく、標準仕様書に示される業務プロセスや帳票と現行業務との差異も業務手順書に紐づけてGovmates Pit内で管理することにしました。
これにより、現状業務との比較分析(Fit & Gap)の結果の全てがGovmates Pit内に集約され一元管理できるようになったため、システム標準化に伴う現行業務への影響とBPRを行う際のポイントを可視化した上でBPRに取り組む環境を整えることができました。
また、各業務の担当課においては基幹業務システムベンダーから標準準拠システムの機能について説明を受ける際に、「現行業務においてどのような影響が出そうか」など、あらかじめ課題を把握した上で、標準準拠システムへの移行を見据えた検討・対応ができるようになると考えています。
取り組みのイメージ
Govmates Pitで業務手順書を作成
Govmates Pitで標準仕様書との差異を管理
Govmates Pit上でシステム標準化に伴うBPRの進捗管理を行うことについて各業務の担当課からは、「自治体システム標準仕様書に示される業務プロセスに現行業務のプロセスを紐づけて整理していくのは分かりやすい」、「一元管理された情報を検索できるようになったのが良い」といったフィードバックをもらっています。
このようにGovmates Pitを活用することで、BPRの観点からシステム標準化に向けた取り組みが推進できるものと感じています。
また、国から示されている「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」についても、宇和島市では現在約24%のオンライン利用率を2024年度末までに60%まで向上させることを計画しています。その際には、システム標準化の取り組みと同様に、オンライン化によって影響を受ける業務プロセスを整流化しながら、BPRの推進とデジタル技術の有効活用を見据えた取り組みにしたいと考えています。
業務改善というのは、客観的なデータがなければなかなか理解を得ることができない取り組みです。Govmates Pitで可視化の取り組みを進めたことで、私たちデジタル推進課と、各業務の担当課が同じデータ・同じ業務プロセスを共有しながら、客観的な視点で議論ができる環境が整ったことはとても大きなメリットであると感じています。
Govmates Pitによって業務を可視化しデータを共有することで、業務改善を推進する側と業務改善に取り組む側の双方が共通認識のもとで、同じ前提で話をすることができます。これはただの可視化ツールではなく、一種のコミュニケーションツールにもなると感じています。今後は、Govmates Pitをベースとして、各担当課相互でも業務改善の議論が活性化するなど、自立的な取り組みが拡大していくことに期待をしています。Govmates Pitは、組織力を底上げしてくれる。そんな可能性を秘めたツールかもしれませんね。
そうなると、同じベンダーの基幹業務システムを使っている他の自治体における業務の見直し方法や、オンライン化された行政手続きの業務プロセスを参考にすることが可能となりますので、システム標準化に関する取り組み、ひいては行政DXがますます加速していくことが期待されます。
当市のみならず、業務の可視化やBPRの進め方に悩んでいる自治体は他にも少なからずあると感じています。宇和島市の事例が他の自治体においても参考になることを願っていますし、より一層多くの自治体でGovmates Pit活用の輪が広がっていくことで全国各地の好事例が共有されることを期待しています。
業務の可視化とBPR・業務標準化に関する進め方は多種多様であり、Govmates Pitを最大限に活用した宇和島市様の取組みは、多くの自治体様にとって参考としていただきやすい素晴らしい事例の一つと考えております。全国200以上の自治体様と行政DXに取り組んできたガバメイツだからできることがあります。どうかお気軽にお声掛けください。